廣瀬工業として主に水回りや水道・トイレ・お風呂などに携わり、岩沢空調としては主に空調回り、エアコンや換気・排気などを手がけています。建物を人体で例えると、血管となる部分を担っています。お客さまとの打ち合わせや設計事務所との打ち合わせにも私たち自身が参加して、建物の設計の意図などを直接お聞きしながら工事の最前線で携わっているという形です。
技術集団 木村組の人々Part 6
岩沢空調設備株式会社
- 代表取締役
- 岩澤 一宏氏
- (空調換気設備工事)
有限会社廣瀬工業
- 廣瀬 忠氏
- (給排水・衛生設備工事)
仕事の特徴について
岩沢空調設備と廣瀬工業、どういった役割で木村組に携わられているのでしょうか。
木村組のさまざまな職人さんたちがチームになっているというか、木村組のためにみんなが一生懸命自分の仕事を担当して、それぞれの役割を担っているという責任を強く感じています。
木村組発足前からのお付き合いだと伺いました。
木村さんと当社の付き合いというのは、50年くらいになると思います。私の親父が2代目なのでその頃からのお付き合いです。木村組は発足して20年くらいなので、木村組が始まるよりもずっと前から一緒にやらせていただいています。木村組の歴史以上の長い長いお付き合いです。
私たちは木村組発足当時からなので、それでも20年以上のお付き合いにはなるでしょうか。2代目、3代目と脈々と続いている職人さんが多いので、自分たち1代で終わりというわけではありません。代々変わっても、同じ木村組として一緒にやっていけるように、次の代のことも考えて仕事をする。自分たちの持ち場は必ず後世につなげていくというか、そういったつながりのようなものをすごく感じています。
コミュニケーションについて
木村組での仕事で感じていることは?
建物や住宅というのは、いろいろな職人さんの技術を組み合わせていくという感じがありますが、もちろんそれぞれの歩調が合わないと良い住宅はできないと思います。例えばそれぞれの職人さんにいろいろな個性があったり、いろいろな要因で工事が順調に進まないことなどもあるんですが、木村組の現場に向かい仕事を行うときは、皆さん現場に立ち会って長いですから、まるで川の流れようにするすると仕事が進みます。非常に心地よく仕事ができるんですよね。
木村組は技術集団ですが、それぞれが自分たちの腕とか技術とかには責任感や自信を持っていて、社長に言われてやらされているという感覚はみんな持ってないと思います。各業種の皆さんそれぞれに継承してきているものがあるので、自分たちの持ち場は絶対崩さないという意識が高いと思います。そういう職人さんたちが集まっているから話しやすいのもあるし、分かり合うことでいいものを作っていこうという意識を高く持っています。「自分が良ければ」ではなくて、「他の職人さんたちもやりやすいように」と考えているんだと思います。
木村組における仕事のスムーズさはどこから来ているのだと感じますか?
木村組っていうのは団結しているからこそ組なんですけど、そもそも「組」として名付けられたのは社長の意思なんですよね。そうすると、若い人たちを育てていく、そういう意味合いがあるのかなと思います。実は、木村組の若い人たちでボーリング大会や屋形船、暑気払い、忘年会などのイベントも頻繁に開催されます。職人さんたちどうしの接点を作っていただいて、その上で現場で会う。そういったオフのコミュニケーションも「和」が取れるというか、いいものを作る要因になっているんじゃないかなと。ものづくりですからね。みんなで協力し合っていくのが一番いいですから、それにはやっぱり木村組として若い人たちとベテランの人たちと、交わりを作るような工夫をされているのかなと思いますね。
木村組の中には2代目とか3代目の方々がたくさんいるので、いつもご家族とかご兄弟とずっと仕事してる方々がたくさんいるんですよね。割と狭い世界でいつも一緒に働く環境の中に入った若い子たちは、なかなか窮屈な面もありますよね。それを逆に木村組として一緒に仕事をすると、さまざまな業種の中に同年代の人がいるので、イベントを通してすごく和気あいあいとした環境ができるし、現場でもお互いを尊敬しあいながら、それぞれの仕事を尊重しながら作業できると思うんですよね。有名企業にも入らずに自分の家業を選んだわけですから、プライドが持てる職人になってもらいたいと思いますし、その分、収入もみんなが上がっていくような循環が生まれていくような気がします。
やりがいについて
どういったときに、木村組としてのやりがいを感じていますか?
木村組はお客さんとずっと長い間お付き合いされるので、引き渡した後もメンテナンスも含めて我々がお客様のもとへ伺うことは多いです。お客様のためにより良い住環境をご提供したいと考えています。木村組としてだけでなく、岩沢空調設備として、他に負けられないというこだわりもあります。工事に入って、もちろん設備図を見ながら仕事をするのですが「本当に設備図通りに作業するのが正解なのか?」という疑問を常に持つようにしています。
図面通りにそのままやった方が自分たちは楽なんですよね。でも「図面通りだよ」と言って、自身の専門分野にも関わらず逃げ道を作っていないかと考えているんです。
木村組では、現場で実際に見て、やっぱりちょっとおかしいなと思えば打ち合わせすることができる。デザインの様子や天井の形、全体の完成形まで、提案をしっかり受け止めてもらえることは、木村組での仕事に非常にやりがいを感じる部分です。
同じくやりがいについて、廣瀬工業さんは?
工事の現場って、お客様の顔を見ないでそのまま工事が完了することも結構あるんです。その点、木村組での仕事は、お客様とも直接お話をさせていただけるので、ほとんどの職人さんたちはお客様から最後にありがとうと言ってもらえるところまでの仕事ができてると思います。水道施工って、実は工事中から使う水道を整備するところから、お客さまへの引き渡しまで、最初から最後まで現場に出入りするので、いろんな業者さんと顔を合わせる機会が多いんです。いろんな方とコミュニケーションを取りながら現場での対応や他の職人さんたちのこだわりの部分にも合わせる対応力というんでしょうか、そういうところが強みであり、やりがいなのかなと思います。
今後の展開
これから先、どういった仕事を手掛けたいですか?
我々は家族経営ということで、図面は今も僕らが自分で描いていますが、近年、建築BIMというツールの登場で、建物の外観や内装を含め、設備の設計をある程度3Dで示すことができるようになってきました。そのおかげで現場でも立体を見ることでイメージを共有できれば、いちいち僕が現場に行かなくても理解の相違がなくなったり、いろいろなことがスムーズになるのかなと感じています。新しい技術も取り入れてバーチャルな伝達の方法なども考えていきたいなと、これからの課題として、夢として思い描いています。
永く続く職人の世界でも、変化は受け入れていくことが必要なんですね。
やっぱり一人ひとり、得意不得意はあるんですが、施工する環境や道具などに左右されず、誰でも同じような完成度で施工できることが課題です。
特定の人にしかできない施工が無くなるように、技術を伝えるコミュニケーションの場や、オペレーションマニュアルなどを作っていければ、どなたを職人さんとして迎えたとしても同じような施工が可能になります。昨今は担い手がかなり少ないことや、職人が減ってるなどの人材の問題もあります。このまま長く続けていきたくても、受け皿が足りなければ続けられませんものね。
過酷で汚くてやりたがらないっていうような環境イメージが減って、誰でも業界に入ってきて習えばできるようになれば、チャレンジしてくれる人も増えるんじゃないでしょうか。そんな展望を持って取り組んでいます。